DTMマガジン112号掲載の平沢栄司 氏による記事から抜粋
- VOID Modular Systemとは?
- インストールとシンセを組み立てるための準備
- VOIDでマスターするアナログ・シンセの構成と各パラメータの機能
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VOID Modular Systemとは?
VOID Modular System(ボイド・モジュラー・システム)は、VST2.0対応のソフトをホストとして動作するプラグイン形式のWindows用ソフトウエア音源だ。
モジュラー・タイプのアナログ・シンセをシミュレーションしたもので、シンセサイザーを構成する要素=モジュールを組み合わせて自分なりのシンセを組み立てることができるのが特徴。自由度が高くさまざまな音作りが楽しめる反面、初心者は何をどうしていいのかサッパリ分からないのが欠点だ。そこで、ベーシックな減算式シンセのシステムを組み立てて、それぞれのモジュールの役割と接続の方法を紹介していこうと思う。また、基本的な音作りの方法も紹介するので、シンセを使うのが初めてという人も、ぜひ挑戦して頂きたい。
~後略~
インストールとシンセを組み立てるための準備
VOIDのインストール自体は簡単で ~中略~ メッセージに従い作業を進めていけばいい。基本的には、「はい」、「OK」、「次へ」で進めてしまって問題ないだろう[1]。
インストールが無事に完了すれば、VSTインストゥルメントのホスト・アプリケーションから他のプラグイン音源と同じように呼び出して使用することができる[2]。
[1]
途中、VSTiのプラグインをインストールする場所を指定するダイアログが開く。これは、すでにホスト・アプリケーションで利用しているVSTiと同じところにすると便利だ。
[2]
~前略~ VSTインストゥルメント一覧にVOIDが表示されている。アサイン後、EDITボタンを押すとVOIDの画面が開くので、スプラッシュ画面はOKを押して閉じておく。なお、トラック側のMIDI出力ポートとしてVOIDを選択しないと音が出ないので注意しよう。。
●イニシャライズ(初期化)された音色データを用意
[3]音色メモリーの選択/音色データの初期化
音色は、0~9の10バンクにそれぞれ128音色がメモリーできる。バンク0にはプリセット音色が用意されているので、バンクを切り替えて空っぽの音色を選択しておこう。 既にある音色データを破棄したいときには、PRESETエリアのINITボタンをクリック。I/Oを除くすべてのモジュールが削除され、初期状態からの音作りを行うことができる。
●シンセを組み立てる為の基本的な操作
[4]モジュールを追加/削除する方法
MODULESエリアをクリックして、リストから追加したいモジュールを選択する。下段のラックに追加されたモジュールは、マウスでドラッグすれば好きな位置に移動させることが可能だ。モジュールを削除したいときは、モジュール上で右クリックして開くメニューからDELETEを選べばよい 。
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[5]モジュールを繋ぐパッチ・ケーブルの接続方法
モジュールに用意される各端子間をつなぐようにドラッグすると、ケーブルが表示され結線される。1つのOUT端子から複数のIN端子へ分岐させることができ、また、IN同士やOUT同士、異なる信号を扱う端子同士は接続できない。接続を解除するときは、IN側の端子をクリックすればよい。
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VOIDでマスターするアナログ・シンセの構成と各パラメータの機能
それでは、シンセを構成する基本的なモジュールを追加していきながら、その機能を紹介していこう。
●オーディオ信号や制御信号の入出力を行なうI/Oモジュール(アイ・オー)
初期化しても表示されているI/Oモジュールは、演奏する制御情報やオーディオ信号を入出力する為のモジュールだ。上段のブロックには各種モジュールへ送る制御信号の端子が並び、下段のブロックにはモジュールからのオーディオ信号を外に出力するための端子がある。
[6]I/Oモジュール
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CV(コントロール・ボルト端子):音程を表す信号を出力
GATE(ゲート端子):ノートのON/OFFを表す信号を出力
(ノートON=最大値、ノートOFFでゼロ
AUDIO(オーディオ端子):VOIDで作った音をホスト・アプリへ出力する
●サウンドの元になる波形を発信するOSCモジュール(オシレータ)
アナログ・シンセでは、「オシレータ」と呼ぶ発信器から音作りの素材となる波形が出力される。とりあえず、OSCモジュールを追加し結線すれば、ウィンドウ下段のキーボードをクリックして演奏できるようになる。
[7]オシレータをラックに追加する
モジュール一覧から「Oscillator」を選択し、I/Oモジュールの横に配置。
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[8]パッチケーブルを接続する
図のようにI/OのCV端子とOSCのCV端子、I/OのGATE端子とOSCのAMP端子、OSCのWAVE端子とI/OのAUDIO端子を接続。
[9]OSCモジュール
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AMP:音程を制御させるための信号を入力
WAVE:オシレータの波形(オーディオ信号)を出力
TYPE:オシレータの波形を選択(サイン波、ノコギリ波、矩形波、ノイズ)
OCT:オクターブのレンジを設定
NOTE:半音単位で音程をシフトさせる
FINE:微妙に音程をシフトさせる
●サウンドに時間的な変化を加えるADSR Envelopeモジュール(エンベロープ)
この状態では、ノートONで音量最大、ノートOFFでゼロとなる単純な発音しかできない。そこで、音量の時間的な変化を設定できるよう新しいモジュールを加えてみる。 ADSR Envelopeは、時間に応じて刻々と変化する制御信号を作ることができるモジュールだ。OSCの音量を決めるAMP端子にADSR Envelopeからの信号を送り込めば、音量変化を作り出すことが可能となる。
[10]エンベロープをラックに追加する
モジュール一覧から「ADSR Envelope」を選択し、OSCモジュールの横に配置。
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[11]パッチケーブルを接続する
I/OのGATE端子とOSCのAMP端子の接続を解除した後、I/OのGATE端子とADSRの上段のIN端子、ADSRのOUT端子とOSCのAMP端子を接続。
エンベロープには、ノート・オンの後、最大値になるまでの時間(A:アタック・タイム)、ノート・オフまで維持される値(S:サスティン・レベル)最大値から持続値まで減衰する時間(D:ディケイ・タイム)ノート・オフの後、ゼロになるまでの時間(R:リリース・タイム)の4つのパラメータが用意される。これらを設定することで、時間に応じてレベルが変化する波形=エンベロープ・カーブを作成できるのだ[12]。
[12]エンベロープ・カーブ
[13]ADSR Envelopeモジュール
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IN:エンベロープを動かすトリガーとなる信号を入力
OUT:エンベロープで作成された波形を出力
A:アタック・タイム(立ち上がりの時間を設定)
D:ディケイ・タイム(減衰の時間を設定)
S:サスティン・レベル(持続するレベルを設定)
R:リリース・タイム(余韻の時間を設定)
AMOUNT:アマウント(エンベロープ・カーブの最大値を設定)
●オーディオ信号の倍音を変化させるFilterモジュール(フィルター)
この状態では、オシレータで設定した波形そのままの音色しか得られない。そこで、波形を加工して音色を変化させるためのモジュールを追加しよう。Filterは、入力されるオーディオ信号の特定の周波数帯域のみを通過させることができるモジュールだ。そこに、オシレータから出力を送り込めば、波形の倍音の量が変化して音色変化を作り出すことが可能となる。
[14]フィルターをラックに追加する
モジュール一覧から「Filter LP/HP/BP/Notch」を選択し、ADSR Envelopeモジュールの横に配置。
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[15]パッチケーブルを接続する
OSCのWAVE端子とI/OのAUDIO端子を解除した後、図のようにOSCのWAVE端子とFilterの上段のIN端子、FilterのOUT端子とI/OのAUDIO端子を接続。
[16]Filterモジュール
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IN:フィルターへオーディオ信号を入力
OUT:フィルターを通過したオーディオ信号を出力
TYPE:フィルターの種類を選択
・LP:ローパス(カットオフ周波数よりも低い帯域が通過)
・HP:ハイパス(カットオフ周波数よりも高い帯域が通過)
・BP:バンドパス(カットオフ周波数を中心とした限られた帯域のみ通過)
・BR:ノッチ(カットオフ周波数を中心とした限られた範囲以外の帯域が通過)
RESO:レゾナンス(カットオフ周波数付近の帯域を強調して音色にクセを付ける)
通常の音作りで使われるのはLP(ローパスフィルター)だ。CUTOFFツマミを右から左へ回していくと、音色が丸く(柔らかく)なっていく。また、カットオフを下げた状態でRESOツマミを右へ回していくと、鼻をつまんだようなクセのあるサウンドに変化していく。
平沢 栄司:作編曲、各種打ち込み、音楽誌での執筆、専門学校講師をこなす “音楽系の何でも屋”。
DTMマガジン
発行元/株式会社 寺島情報企画
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